繁華街

哀歓の熱きがままに劇場をなだれて人の出でて来りぬ
哀歓を劇場の席に操作され人等生き生き出でて来りぬ
幕しゐる自然の情緒淡くして狭きホールの階段登る
フィクションの摩天楼として都会あり押し合ひ人等肩を並ぶる
食堂街電器街など区分され人等技術を競ひ合ひたり
空高く昇りてゆける観覧車作りしものが歓声つくる
未来より返り見すれば現在のこの混沌も斉合ならん
何の空も人の感覚操作して生きると?めく看板見上ぐ
繁華街写すテレビを見終わりて大きな空を仰ぐと出でぬ
透明の秋の空気の流れ入る人呼びしばし語りてゐたし
枯れし葉の走れば湧きし若き日の流離の心も過ぎて果てたり
何故に草は笠形なしゐるかなどを思ひて山路過ぎたり
大きなる鳥の目の絵の掲げられ雀を追はむ威しとなしぬ
薬とは毒の適正な利用なると人は不幸を必要とする
紫の光りひそかに吸ひ蓄めてすみれの花の庭隅に咲く
饅頭を半分食べてしまひをり去年より小さき胃袋となる
一つのみ花を掲げてコスモスの生へて来りしつとめを果たす
鉄塔は夕日貫き風凍てる秋逝く山の上に立ちたり

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