小柴博士ゼロに思ふ

ニュートリノは質量零に近き故如何なるものも透過なすると
絶対無の故に何をも透過すと言ひし禅家の心に似たり
超新星現はる時にニュートリノ質量なきが多く生れると
無心なる幼児の心に還るべし佛家説きしは元の心か
われわれが無心に還るは自意識を捨てる努力に生きる他なし
わが意識四遍八達の自在なるは己れを捨てて現はるるらし
自意識を全て捨て去りわが命永遠なるに透過し得るか
天空に雲のなくして満ち亘る星の光りの照し合ひたり
人間が写せし自己の影として宇宙があるといふに気付きぬ
ある上に買ひし納豆冷蔵庫の一番下の隅にしまひぬ
香に誘ふ熟れに成るらしあけびの実割れし枝より小鳥飛び立ちぬ
鳥を呼ぶ熟れに柿の実赤く照り野の共存の一つに生きる
飛び交す枝に光りを散らしめて雀は明けくる詩を転ずる
鳥を呼ぶ柿の実赤く熟れて照り客饗ぶ人につながりてゆく
重心を腰に保ちて歩まんとすれども前へのめりがちなる
人生を思索の枯草食ふなれば笹食ふパンダにほほえみ湧きぬ
同じもの食べても異なる顔もてば意を人一人の我にてあらん
うねりゐし草は風止み何事もなかりし如く陽を返しをり

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