轟きて雷が挙げゐる鬨(とき)の声千の剣を杉の秀構ふ
細き雨に額濡れつつ歩みゆく冷えて生れ来る心あるべく
討死せんもののふの心曇りなし木の根机に暫しまどろむ
空覆ふ杉の巨木の並び立ち社は霊の棲ふ小暗き
鳥海のめぐり幾年商ひて我のつづれるいただき高し
甘すぎる菓子出されゐるお茶の承け峡の宿屋に我は泊まりぬ
ひと度を押して瓶より湯が出しもすがしく宿に茶を呑みており
寄せる波返せる波のひたひたと打つ音たちて岸の夕暮
結ぶ実を木よりもぎたる手の罪の報酬幾ばく金をかどふる

2015年1月10日