二千年
一月八日
まっさらの
八十一翁
胸張り歩む
利 春
なおちゃんに
見られたからね
亀さんがはずかしいって」
うらうらと照る
利春
明日のある
ことの不要に
老ひゆくと
子童の横を
通りすぎたり
としはる
何日よりか
憂ひとなりて
未来あり
つやの失せたる
手の指のばす
としはる
熱き血の
めぐりし記憶
戦は
おろかなりしと
人の言ふとも
仰向けに
ベンチにい寝て
下りくる
大きく深き
青空ありぬ
としはる
蛙らは
土に潜みて
刈株の
曝れしに白く
冬の日の照る
利春
上履が
なくなり靴の
片方が
無くなり仔犬
育ち来りぬ