杉本才逸氏の思ひ出

湖内さんとの対話の席に連なられ花見に来よと誘ひ下さる
春の陽に沈める低きたたずまひ余生養ふ家のしずかに
一樹より庭園をなす大きなる桜は花の盛り上りたり
筧に丁能鍬置かれゐて誰でも筍掘れと言はれぬ
八重桜が普賢象とふ異名もつことも教はり酒を酌みたり
西中はんが先ず加はりて美加志保の男大方談笑したり
松茸の頃といつしか二回になり人饗ぶことが好きと言はれぬ
剪定の枝が音立て落ち来る改革日本の官僚のごと
水の減る池に鷺等の群りて動く頭は命消へゆく
空の青滴り咲ける露原の野辺の径をかへりゆくかな
小石見へぬ街川となり人間の暮しの澱が底にゆれをり
大股に歩み来りてつぶあんのあんパン買ひて食べにけるかも
月旅行いつしか言はず兎ゐる月のさし絵が多くなりたり
空の青露原の青と照し合ひ野辺の空気の澄みとうりたり
幾日も水減る池に鳥の群れ水が育てし命の多し
カンバスに黄色のたうちゴッホ描くひまわりの花我に向ひぬ
ながき暮しの澱の溜まりたる水の澄み来て底の惨たり
五時半となりて朝の目定まりぬ目が定まりて起き上りたり
あんパンを半分食べて半分を戸棚にしまひ老ひて来りぬ

神を祀り村人一つに結びたる古き行事のほそぼそとして
名簿持ち甘酒頭をふれて来ぬ村人結びし永き行事は
不倫とは文化であると文字浮び男女次々映されてゆく
人妻のときめきも亦ゆるさるべきと判断越へる文字映されて
甘漿の日毎に充ちて柿の実の大きく紅く夕日に照りぬ
柿の実は充ちて大きく日に照りぬ営み来りし晩年として
柿の実は甘く大きく熟れて来ぬ土に還らん晩年として
急速に言葉の充ちて自在なる我の晩年などもあらんか
おごそかに茜の空にわたりたりひと日照しおのずからにて
柿の実は大きく甘く熟れて来ぬ食はれゆくべき営みにして
充実は他者に与へん営みか柿の実甘く大きくなりぬ
食はるべく甘く大きく育ち来し柿が営む宇宙の命
食はれゆき己れ越へたる命もつ柿の実なると熟れたるを?ぐ
我が食ふも鴉が食ふも同じ価値柿の実びっしり熟るるを眺む
大刷山駆けて登りし足なりき両手をつきて漸く立ちぬ

甘酒も神の成したるものなりきお頭をさせてもらふとふれくる
日本海の潮の流れが舟運び文化運びて来しにあらずや
出雲神話浦島伝説丹後王朝裏日本の開化思ひつ
中国や韓国が潮に乗らむには日本海岸先進なりし
山陰に文化が栄へ大和など未開なりしも思ひてみつつ
垂直の断崖いくつ石切りて人等はここに営みながし
ナノの微と宇宙の大を究めゆき世あり様の限りもあらず
その昔女の虚栄と言はれたりファッションは今産業にして
鍛冶工も算盤工もすたれゆき朝シャンなどに若き等生きる
目一箇の神を祀りて鍛冶ありき総会などに神像掛けにき
天の日鉾出石に壕りし漂白の鉄を作りし民にありしと
元伊勢に五こくを生める女性ありて豊受神と祀られたると

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