細胞老化とテロメア

 8月は「お盆」の時期で各家庭では「ご先祖様」をお迎えされていることと思います。「精霊の世界」についてはよく分かりませんが、56才で亡くなったアップル社のステイーブ・ジョブズ氏は「死は生命最大の発明である」と言い「古いものを消し去り新しい道をつくる」意義があると言っております。人間の細胞は37兆個ありますが、常に細胞分裂を繰り返して新陳代謝を図っています。この細胞の染色体の末端にはテロメアという「鉛筆のキャップ」のようなものがあり、これがDNAを保護しております(図)。そして細胞分裂の度にテロメアは短くなり、これにより細胞は老化していき臓器の機能が低下していき寿命が決定されるわけです。テロメアの短縮を修正すると癌化することが実証されており、テロメア自体は細胞分裂を制限して癌化を予防する働きがあるのです。このような細胞分裂によるテロメアの短縮は「体細胞系」で行われますが、「生殖細胞系」である卵子、精子ではテロメアが短くならないので、際限なく細胞分裂できます。このことは40億年前に生命が誕生してから、「生殖細胞」が生き残りあらゆる生物と最終的に人間の出現につながったことが説明出来ます。生物の種の存続に関してみれば「生殖細胞」に比較して「個々の死」はそれほど重要ではないわけです。また生殖に関して雄と雌を有する有性生殖が生命体としては効率的であり、父と母のDNAがそれぞれ受け継がれ、遺伝子の変異などを取り入れて新しい多様性ができるというメリットがあります。優れた子孫を残して次世代に後継していくという、メカニズムが出来上がっているのです

テロメア(茶色)はDNAの先端にあり、細胞分裂の度に短くなって細胞の老化と寿命を規定する。この機構が働かないと癌化につながる。(ロビンス、基礎病理学より)

優秀な子ども達を育てる象の群れ

 ご存じのように鮭など一般生物は受精が終わると直ちに死んでしまいますが、人間の子供は出生後成育するまでに手のかかることが多く、「子育て」の期間が長く保たれています。これは現代人と同じグループに属するクロマニョン人が出現した20万年くらい前から徐々に進化した結果と思われますが、優秀な次世代を育成する社会的システムが人間社会の中で生活するうちに培われたもので、後進を育てることが人間しかできない価値のある能力と言えます。今後どのようになっていくか、もし1万年くらい生きられたらその時の人に確かめてみたいものです。(2021.8)