男と女への分化

 性染色体の構成に関連して減数分裂して得られた正常の精子には23,X(全体で23個の染色体構成で、22個の常染色体と1個の性染色体:この場合はX染色体からなる)と23,Y(性染色体はY)の2種類ありますが、正常の卵子には23,Xの1種類しかありません(図。このように受精卵の染色体は精子の持つ性染色体(X,Y)によって決定され、男性(46,XY)か女性(46,XX)が決まります。初期の生殖器系は男女とも同一で未分化性腺(原始生殖細胞など)が活動を始めるのは胎生第7週からで、男性の表現型の発生にはY染色体が必要です。Y染色体短腕の性決定領域にあるSRY(Sex-determining region Y)遺伝子が転写因子として働き、精巣決定因子TDF(Testis determining factor)のスイッチを入れて、精巣への分化を誘導します。Y染色体がない場合(女性)にはTDFが発現しないで卵巣への分化が始まるのです。その後胎児の精巣は男性化ホルモン(テストステロン、ミュラー管抑制物質)を産生し、内性器や外性器を形成していきます。男性の生殖器はウオルフ管(中腎管)が、女性の生殖器はミュラー管(中腎傍管)という、いずれも中胚葉由来の器官が中心となって分化が進んでいきます。思春期以降の発達についてはそれぞれ成熟した精巣と卵巣から出るホルモン環境が影響していきます。精神行動学に関し、男性化と女性化についても胎児期のホルモン環境の影響があるという説もありますが、エビデンスがイマイチで勉強不足なこともあり今回は触れないことにします。(2021.4)

精子と卵子の形成(ムーア:人体発生学より)

男女生殖器の分化(塩田浩平:人体発生学講義ノートより)