最近印象の強かった演奏

辻井伸行というピアニストをご存知でしょうか。生まれつきの全視覚障害を持った彼は、おもちゃのピアノを与えられた幼児期から、聴覚だけで音楽を理解かつ演奏し、昨年若干20才の若さで世界的なクライバーンコンクールで優勝をしたのです。スコアを眼で読めないだけでなく、指揮者や他の演奏家とのアンサンブルも聴覚のみで完璧に行ったことは驚異としか言いようがありません。

これに関し思うことがあります。200年に小腸不全の患児に小腸移植を行いましたが、患児は生後より16年間経口摂取がほとんどできなかったため味覚が十分発達していなく、甘い、辛い、酸っぱい などの感覚を獲得するまで約半年かかり、グラフトは十分機能していたのに拘わらず、経口摂取を進めるのに難渋しました。小児期におけるこのような機能の一部が欠損した場合に、その獲得・補充にはかなりの時間と労力を要しますが、反面これまでにそれを補うためにつちかった他の機能は甚大なる力を発揮することとなり、これを伸ばすためには親や医療従事者を含め周囲の人の援助が重要な役割を果たすと思われます。